キオクシアがトヨタ抜く!まだまだ狙えるNAND型フラッシュメモリ関連出遅れ銘柄
6月12日、キオクシアホールディングス(285A)の時価総額がトヨタ自動車(7203)を上回り、国内首位に立ったというニュースが市場を駆け巡った。半導体メモリ企業が日本を代表する製造業の時価総額を超えるというのは、正直なところかなり衝撃的な出来事である。
この急騰の背景にあるのが、NAND型フラッシュメモリの需要爆発だ。元来NAND型フラッシュメモリはスマートフォンやパソコン向けが主流だったが、生成AI市場の急成長を受けて世界的にAIデータセンターの建設ラッシュが続いており、AIサーバーのストレージ向けに需要が急拡大している。
ここで少し整理しておきたい。
NAND型フラッシュメモリとは、電源を切ってもデータが消えない不揮発性メモリのことで、スマートフォンやパソコン、SSD、データセンターなど幅広い機器に欠かせない基幹部品だ。大容量化とコスト削減を両立させるため、メモリセルを縦方向に積み上げる3次元NAND(3D NAND)への移行が進み、層数を高める技術競争が業界の軸になっている。AIの主記憶を担うDRAM(HBMなど)が処理速度を支えるのに対し、NAND型フラッシュメモリは膨大なデータの蓄積を担う、AIインフラのもう一方の主役だとみて過言ではない。
キオクシアは26年度の最優先戦略として、332層という最先端の第10世代BiCS NANDの量産化を表明している。データ転送速度が33%向上し、単位面積あたりの容量は59%拡大するとされ、生成AIブームを背景に最先端プロセスへの設備投資が再始動しつつある段階だ。実際、26年1〜3月期のキオクシアの純利益予測は約82億ドルと市場予想を大きく上回るなど、NANDメーカー各社の収益力は空前のレベルへ急回復している。
けん引役はAIサーバー向けストレージ需要の拡大だが、その生産ラインを支える検査装置やテスターを手がける企業にも、同じ波が確実に及んでいる。
生成AIブームの初期は、HBMやGPUばかりが注目されていた。しかし学習データの巨大化に伴い、データを格納するNANDの物理的な限界がボトルネックとして浮上してきた。キオクシアの技術攻勢と設備投資の再開によって、26年はNAND関連の装置やテスター企業に大きな業績変化が生じる転換点になる、というのが私の見立てだ。
こういった背景から、今回注目したい銘柄はイノテック(9880)だ。
まだまだ狙えるNAND型フラッシュメモリ関連出遅れ銘柄
▶︎ イノテック(9880)
東証プライム|PER10.2倍|PBR1.87倍|利回り3.20%|時価総額557億円
半導体商社からテスター専門メーカーへ転身
イノテックは、半導体商社としてスタートし、その後は設計ソフトウェア(EDA)や組込システムの提供、さらに自社開発の半導体テスターを主軸とする自社製品メーカーへと転換を進めてきた企業である。
同社のテスター(検査装置)事業において最大の主力製品となっているのが、NAND型フラッシュメモリ向けのメモリテスターだ。この製品は最先端NANDの生産ラインに組み込まれており、まさに今回のテーマの中核を担っている。世界大手のアドバンテストやテラダインがカバーしきれない、特定のバーンインテストやメモリ特化型の低コストかつ高効率なソリューションで強い差別化を実現している点が、イノテックの強みだと私は考えている。
テスター事業が前年同期比127%増という伸び
直近の決算では、テスター事業の売上高が前年同期比127%増という伸びを記録した。通常の成長ペースを大きく超えるこの伸び率は、海外の有力顧客が持つ次世代NANDや先端メモリの生産ラインに同社製品が正式採用されたことを示していると見て間違いないだろう。
加えて、複雑化・長時間化するHBMやDDR5など先端メモリのテスト工程にも対応しており、NAND以外のテスター需要も構造的に押し上げられている。もう一方の柱である組込システム事業も前年同期比19%増と、景気変動に強い安定成長を維持している点も見逃せない。台湾のSTAr社を通じて中国やアジアの海外市場で先に実績を積んできたことも、リスク分散として高く評価できる材料だ。
26年3月期は経常利益66%増で着地
5月14日に発表された26年3月期通期決算は、売上高467億3700万円、経常利益は前期比66%増の29億1200万円という大幅な増益で着地した。市場予想を上回るポジティブサプライズだったと私は受け止めている。
増益の要因は、生成AI向けインフラ投資の恩恵を受けたテスター事業の想定以上の伸びと、組込システム関連の好調が利益率を押し上げたことにある。もっとも、それだけではない。自動車産業の停滞長期化に伴うグループ会社ガイオ・テクノロジーの不振や、米中対立の激化による台湾STAr社のビジネスへの地政学的リスクは、引き続き気になる点である。
増配で配当利回り4.88%、株価は上昇トレンド
イノテックは3月、特別配当を含む大幅な増配を発表した。年間配当は1株あたり125円となり、前期比55円増、1年で1.7倍という急増ぶりである。発表時の株価2,500円台で計算すると配当利回りは4.88%に達し、東証プライム平均を大きく上回る高利回り銘柄として注目を集めた。
その後、好決算とNANDテーマの再評価を背景に株価は上昇を続け、6月11日時点では4,035円まで上昇している。PBRは1.9倍台、PERは10倍台にとどまっており、業績の成長角度を踏まえればまだ割安感が強い水準だと私は見ている。
気になるのは、信用倍率が800倍台と高水準にある点だ。短期的な急騰の反動で出やすい下値リスク。ここは頭に入れておきたい。
まとめ
・NAND型フラッシュメモリ向けメモリテスターが主力製品で、最先端NANDの生産ラインに組み込まれている
・テスター事業の売上高は前年同期比127%増、組込システム事業も19%増と二本柱が好調である
・26年3月期は売上高467億3700万円、経常利益29億1200万円(前期比66%増)で着地した
・年間配当は1株125円(前期比1.7倍)に増配し、配当利回りは4.88%まで上昇した
キオクシアが牽引するNAND型フラッシュメモリのスーパーサイクルは、まだ始まったばかりの段階にあると私は見ている。設備投資の本格化がこれから具体化するのであれば、その恩恵を受ける関連銘柄の動きを引き続き追いかけていきたい。